Translate

2014年10月9日木曜日

「way to the demise」PV製作の裏話(解説)

歌:猫村いろは

作曲:瀬良さん

作詞:Hagia-solvaさん

PV:はこのリテ



私がこちらの曲のPV製作を担当するに至ったのは、ピアプロ内で「イラスト募集」であった

こちらの楽曲に出会ったのがきっかけであります。(前回と同じですね。)

音の美しさ、訴えかける歌詞・・・これは!

ということで思い切って声をかけさせて頂いたのです。

歴史にとても興味を抱いており、争うことの愚かさや、事件や事故の悲惨さを訴える作品

に触れることが多く、自分がつくることができる範疇でもありました。

(PV製作中にもある名作の演劇を鑑賞し、

ああこんなに争いはえげつないものなのかと考えさせられました。)

こういった楽曲は決して多いものではないのでここで担当できなければ二度と

関われないのではないかという焦りも生じていました。

(イラスト募集をしている楽曲の担当になるにはタイミングが大事なので、

ここで声をすぐかけていなかったらまず担当につくことは出来なかったでしょう。

とはいえ6月に声をかけた後、本格的に製作に入るのが8月、そして完成したのが10月・・・

本当にお待たせしました。)



~楽曲について~

曲名「way to the demise」についてですが、「demise」は「終焉」という意味です。

(簡単に直訳すると「終焉への道」といった所でしょうか・・・?)


(※瀬良さんやHagiaさんのお言葉を抜粋・参考にさせて頂いている箇所が複数あります。)


この楽曲のテーマは「争いの終焉に向かう始まり」「平和へと歩き出す歌」であります。

「人の不作為は、角度を変えてみればひとつの暴力である」





まず、PVの雰囲気を決めることがとても難しかったです。

この楽曲は過去から現在までに世界の至る所で

起こった争い、事故、事件の犠牲者への鎮魂歌であり、

特定の時代や場所を想定したものではないので、

悲惨さをどうイラストで表現すればいいのかとても決められませんでした。

ただ抽象的にしすぎても???なPVに仕上がってしまいそうなので

あまり具体的にならずに、かつ悲しみを、悲惨さを表現するように心がけました。

(一番初めに設定を考えずに聴いた印象では、太平洋戦争で父親を失くした少女のイメージで、

横スクロール形式でつくろうと考えていましたが、これでは具体的すぎるので

イメージを一新して、テーマを組み込ませながら今回のようなPVに仕上げました。)



歌詞に沿いながらある程度のイメージをふくらませて、

歌詞にない表現(補足といったような・・・)のイメージもその中に付け加えます。

PVではシンプルさがとても大事であったりするので、今回の主な登場人物は2人にしました。

いろはと、いろはの大事なひと。

内容をさらっと書きますと、いろはが大事なひとを失い、その悲しみを胸に

争いや事故、事故などがもう繰り返すことのないように・・・祈り続けるというものです。

それまで無関心だったとしても、いろはのように花を捧げたり、祈ったり・・・とする人が

増えていってほしいという意味も込められています。


それでは動画に沿って裏話を書いていきます。










前奏はシンプルに黒い画面の白い字でタイトルといろはの名前を表現しました。

まず冒頭の部分。

「蒼い月光が 冷たく照らした荒野に」の部分は、

歌詞の通りにイラストを描きました。”蒼い”を表現するのが難しかったです。








白い花を捧げるいろは。悲しそうな表情です。







蒼い荒野から赤い背景に変わるシーン。

”激動のうねり”や、”花たち(亡くなった方たち)”を表現するには

蒼い荒野よりもこちらの方が合っていると思いこういった形にしました。








間奏のシーン。間奏がある度にこの2本の花が出てきています。

これは右:いろは 左:いろはの大事なひと

をお花で表現したものです。

歌の内容が、花を捧げるシーンから過去の幸せだった時へと移行するため、

お花の状態を逆再生しています。(歌詞と歌詞の間をこの表現でつなげています。)










背景も暗い紫から少しずつ明るくなっています。











幸せだった頃の表現。

いろはが大事なひとと共に過ごした大切な時間。








大事な人と永遠の別れ。

左の花がいきなり折れて、そして枯れてしまいます。

いきなり折れるのは後の部分の歌詞「さよならも言えずに」を表現したものです。










大事な人と別れた後の悲しみに打ちひしがれるいろは。

ここの線画で何が起きたかを暗示しています。







次の間奏。右の花(いろは)は成長しました。

一方で、左の花(いろはの大事なひと)は枯れた後に朽ちていきます。

これは亡くなった後に大勢の人の記憶の片隅に追いやられていくことを表現しました。

孤独ないろは。







一度目のサビ。

「祈り続けるわ」は二度ありますが、一つ目は孤独に平和を祈っているいろはを表現しています。

背景の無数の手は、いろは以外の興味をもたない人たちへの嘆きです。

いろはの後ろには、無関心な人たちが背を向けています。

(これはHagiaさんの提案を参考にしております。

そういった面では、これも一つの暴力となりうると瀬良さんはおっしゃっています。)







この絵は、PVの雰囲気としてあまり抽象的になりすぎずにということで、ここで悲惨さを表しました。

特定の時代や事柄を連想しないようにしておりますが、

少しばかり歴史好きな一面が出てしまいました・・・

とはいえ判りづらいですが^^;


元々はドロドロとした一枚絵は

「欲望の果てに待つものは」からの予定でしたが、

「哀しい物語 もう繰り返されないように」

から切り替えるようにしました。







「欲望」のイメージは争いを企む指導者ですが、

暴力を顕著に表したかったので兵士をこの部分で出したいと思い、上に描きました。

こういった暴力のせいで一般の人が殺されたり、病気になったり、自害したり・・・と

「痛みと絶望 渇きで」苦しむ人たちをその下に描きました。








「無垢な犠牲が幾重にも 明日に積み重ねられて ゆく」

数えきれないほどの犠牲者を炎に包まれた手で表しています。







二度目のサビ。光に包まれたいろはです。

ここは風でなびく演出をしました。





目をつむっていましたが、徐々に開いていきます。



祈り続けるわ、と決意をするいろは。





そして光に包まれていきます。





最後のこの絵は、いろはが孤独でなくなったことの暗喩です。

間奏の際の二本の花と同じような表現ですが、

「終わりの始まり」そう「一人が一人でなくなった悲しみの終わりが始まる」

ということを表しています。

中心の花はもちろんいろはです。周りに少しずつ、芽が生えていきます。

これを具体的には、いろはと同じように花を捧げたり、祈ったりと

忘れがちな、でもかけがえのない”平和”を大切にしていこうと、

いろはの願いに気づく人が増えることを意味します。

周りに増えるのが花でなくて芽であるのは、

気づいたからといってすぐ本当の理解をしたり、共感をするのが難しいことだと思うからです。

でも0から1へ変わる、とても大きな一歩です。

すぐに花にはならない(いきなり0から7とかに変わらない)けど

少しずつ理解をしていく・・・ということです。












記事としては長いものになってしまいましたが、最後まで読んで頂けたでしょうか。

今回のPVでは、動き自体は複雑でないものの、

メッセージ性を大事にしたり、絵の雰囲気を意識したりと

動画にするまでの工程がなんとも難しかったです。

多くの方に、この「way to the demise」が伝わればいいなと思っています。