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2016年12月27日火曜日

「ハンテンユウシャ」プレイ感想







歌:巡音ルカ
作詞・作曲:misa(くるりんぱP)さん
イラスト・PV:はこのリテ


(YOUTUBE版の方が音とタイミングが合っているようのでこちらがオススメです。)






巡音ルカオリジナル曲「ハンテンユウシャ」PV
(フリーゲーム「ハンテンユウシャ」のOPムービー)

を担当させて頂きました。


「ハンテンユウシャ」とはボカロP misa(くるりんぱP)さんの制作する

「『シロクロユウシャ』シリーズ」の4作目となるフリーゲーム。

(ダウンロードページ:http://www.freem.ne.jp/win/game/13259)

1作目からプレイさせて頂いていたのですが、

まさか制作に関わることができるとは思わなかったです。

misaさんとは巡音ルカオリジナル曲「エスケープゴート」で

PVを担当させて頂いた時が出会いのきっかけです。

(「エスケープゴート」はゲーム内の技として登場しております。)





と前置きはさておき…



シナリオと混ぜて一から自分のPVについて語るとなると大変な量になりますので

ポイントを絞ってゲームについて綴ってまいります。






<「ハンテンユウシャ」のここがよい!>

●音楽とマッチした作品

ボカロPさんが作っているだけあって曲のセンスがにじみ出ています。

特定のキャラとの戦闘時、キャラソンが流れるなど音楽と切り離せない作品になっております。

(シナリオ上、misaさんの制作されてきた曲を擬人化したキャラクターが複数登場しますので

音楽と切り離せないのは当然ですね…!)

また、シナリオを通してmisaさんの曲に対する熱い想いに触れることができますし、

逆に、misaさんが出した曲にてキャラクターの気持ちを表現したものもあります。




●楽も有り、苦も有り

キャラクターのそれぞれの生き方や背負っているものに触れることができます。

そういったシリアスありきの深いストーリーです。

(真面目なことを表現するには少なすぎる語彙力…↑)

ギャグも所々に散りばめられており、くすっと笑ってしまうシーンも多くありました。

後述した「心に残ったシーン」でも一部紹介しております。







<「ハンテンユウシャ」のプレイ時間など>

エンドが3種類+1種類あります。

通常は「ミサエンド」に行きますが、特定の条件を満たしてラスボス戦を迎えることで

「勇者エンド」「ノアエンド」「ハンテンエンド」それぞれに進むことができます。

(「ハンテンエンド」に進めばさらに物語を進めることができます。)

「ハンテンエンド」に進むまでには

「勇者エンド」「ノアエンド」をクリア+ミサの全技習得という条件が必要なのですが

全技習得のために闘技場(上級)クリアが必要になります。

この闘技場(上級)クリアがなかなかできず1、2時間ずっと闘技場ループしておりました



やりこみ要素があるので達成感とゲームデータへの愛着を感じる仕様になっております。


ミサと蛇夢というメインキャラを徹底的に強くしていれば

(経験値2倍、闘技場クリアでももらえるステータスアップのアイテム使用など)

その後のシナリオをサクサク進めることができるので、闘技場システムは有難かったです。


最終的には完全クリアまで約15時間プレイ、ミサ・蛇夢は400レベル超えしました。



<心に残ったシーン>

※ここからはシナリオ上のネタバレを含みますので

まだプレイしておらずネタバレ回避をしたい方はブラウザバックをオススメします。

プレイしていないけど、もっと「ハンテンユウシャ」の魅力を知りたいという方は

是非引き続きお楽しみください。




◯病院での説得シーン

現実世界でノアは入院中の病院の屋上から身を投げ出そうとするのですが、

ぺぺがそれを阻止し、説得するというシーン。

このシーンは、PVの担当をお声掛けして頂いた時に知らされていたので

OP内で表現させて頂きました(フライング…)

やはりこのシーンは個人的に好きなシーンの一つです。

個人的にはぺぺとノアは”陰と陽コンビ”で、この友情も好きです。








◯蛇夢の「マスタ~コントロールゥ♪」

蛇夢(さん)の少年好きな一面が垣間見れる文字表現もとても印象的でしたが、

こっそりとマスターの力を発揮するシーンでのこの表現には

個人的にグッとくるものがありました。

(15時間以上のプレイでの唯一のスクリーンショットしたシーンでもあります)









<おまけ>


毎回「シロクロユウシャ」シリーズのクリア記念でイラストを勝手に

描いているのですが、今回も勝手に描いてしまいました…


楽曲に”鎖”という表現があるのですが、作中もその”鎖”と向き合う登場人物が

とても人間らしく感じたことが心に残っているので、”鎖”をテーマに描いてみました。



「『シロクロユウシャ』シリーズ」4作品目となった「ハンテンユウシャ」、

続編の情報はまだ公式に発表されておりませんが、これからも

misaさんの創る作品が楽しみです。


misa(くるりんぱP)さんのブログ:https://culrinpa.jimdo.com/




2016年1月16日土曜日

「いろはひめうた」PV制作うら話(解説)




うた:猫村いろは
作詞:Hagia-solvaさん
作曲:瀬良さん
動画:はこのリテ


いつか還るあの人を信じて待ち続ける。



作曲された瀬良さんからこの曲についての説明を受けたのを踏まえて、

簡潔に表すとこの曲は「無実の罪で死んでしまった”あの人”を想ううた」

というと分かりやすい…かと思います。

曲の「表現したいこと」「誰への歌」ということが明確だったので

コンセプトの把握はとてもしやすかったと思います。

「いろはうた」といえば『いろはにほへと…』の歌ですが

この歌には

いろはにほへ と
ちりぬるをわ  か
よたれそつね な
らむうゐのお  く
やまけふこえ て
あさきゆめみ  し
ゑひもせ    す

「とかなくてしす」→「咎無くて死す」(無実の罪で死ぬ)

というしかけがあります。

日本人としてこのうたを知っているはずですが、

このうたにこんな言葉が秘められていたのには驚きでした。

『いろは秘めうた』ですね。





早速PVを作っていった過程を紹介したいと思います。




まずはうたを詠む主人公の女性のデザインについてです。

前回と違い、イラストは猫村いろはではなく、オリジナルでキャラクターを用意しました。

舞台は奈良時代。といっても忠実に再現するのではなく、

その時代の服装をベースに、現代の作品で描いても

それほど違和感のないようなテイストで、という方針になりました。









髪型は2種類案ができましたので、コラボにて相談させて頂いた上、1番に決定しました。

2番はより少女らしく、”あなた”を待ち続ける妻を表現するのなら1番かなと思います。





お次は、動画の構成を考えるために絵コンテのようなものを作成しました。

完成したものと比較するとかなり違う箇所があります。

PVの構成を考える上では、イメージをどんどん形にしてみるところから(私は)始まるので

とにかく絵で表してみます。

完成したものと比較してみると、構図は変更していますが、

動画の流れ自体はそんなに変わっていないことがわかります。

構成についてなのですが、この曲はちょっと特殊な構成をしている気がしました。

(音楽の知識はそれほど無いので推測で申し訳ないのですが)

一般的な曲にはAメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ…の流れがあるのですが

こちらの曲はAメロ→Bメロ→Aメロ→Bメロ→Cメロ→Aメロ(サビ?)

のように明確なサビが見つかりませんでした。

(↑※推測です

毎度、PVの制作時にサビにとらわれてしまう自分にとっては逆に

構成・構図をつくりやすかったのでその辺はスムーズに作業が進んだのかと思います。











ここから先はスクリーンショットを使って

各シーンの解説(というほどでもないですが)をしていきます。

「冷たく続く  天つ彼方」

歌い出しの部分なので、曲の印象を強くつけてしまう大事な部分です。

「彼方」という言葉から地平線がみえるようなイメージがある上、

このうたは遠い”あなた”へおくっているものなので、

月光と夜の海という設定にしました。






「私を抱く腕はなく」

”私”が「独り」なんだということが表現できればと思いました。



視界が滲みながら赤と黒の画面に切り替え。

そこから寒椿がゆっくりと散る流れは個人的に気に入っています。


回想シーン。歌詞の無い部分に今回は回想を入れました。

今回の楽曲は物語といったらいいでしょうか、設定がすでにありましたので

表すもの自体は比較的迷わずに構成を考えることができました。




とても迷ったのが明確に描くかという点でした。

とても繊細な曲で、あまりアニメっぽく線が明確なイラストよりも

水彩で輪郭があまりはっきりしすぎないようなイラストの方が適しているのでは?

と悩みましたが、ある程度の統一感を保ちやすくするため

また、わかりやすさも追求した(つもり)でありますので

線は明確に、塗りは厚塗りといった感じになりました。





「願いを込めて 結んでいた」

このシーンははじめ、木に結んだ紐が、何度も風で解けて、

それを何度も結び直す、といった文字通りのシーンを再現しようと

試みていたこともありましたが、

どうにか「願う」「結ぶ」を一枚で表現できないかと思い、この構図になりました。

少しながらも、つるしや髪が風で動いているのはその名残かもしれません。


「嘘を  誰が為に重ねてゆく」

楽曲の歌詞にも出ている「紅いままに散った寒椿」が埋もれゆく。

”あなた”が姿を消したが、いつか帰ってきてまた会えることを

願っていることの表れなのか、自分の中の時間はあまり経過していない。

しかし、実際には時が過ぎていっているのだ、

過去のように”あなた”との時間はもう戻ってこないのだと、

時間は後戻りしないのだと

そんな自分と現実のギャップが寒椿で表現できればなと思っています。

なんとなく伝わっていれば本望です。






言わずもがなですが歌詞にも出ていた雪うさぎです。

もともとは曲のタイトルが「いろはひめうた」ではなく「うさぎ」だったようです。

当初は、二匹の雪うさぎ→一匹消える→残った一匹が本物の白うさぎになり、探し廻る。

という一連の流れを表現しようと思っていたのですが

尺とまとまりの関係で、シンプルに一匹の雪うさぎを描きました。




回想シーン2。

あなたが来ないかと待っている時、

後ろから肩を叩かれた。

振り向くとそこには待ち焦がれたあなたがいる。






でもそれは幻で、現実を思い知った瞬間でもあった。

といった流れに持って行きました。


はじめから、何処かでもう会えないとわかっていたのか、

曲の途中でそう気づいたのか。

それはわかりませんが、この曲のタイトルともなる「いろはうた」をうたう時には

すでにそう思っていることは想定されるので

メインのシーンの直前にこの回想を入れることができたのは良かったです。



このまま曲のメインに入ってゆきます。








コラボ内の話し合いで作詞をされたHagia-solvaさんが

「願いを込めて結んでいた 紐が風と遊びほどけては」

のシーンで髪が風で乱れているようなものはどうでしょうとご意見を

頂いて、是非そうさせていただこうと決めたのですが

「髪型が変わる」というのは決断のようなものを表現するのに

丁度良いと(自分は)思っておりました上

折角の頂いた素敵な案でしたし、

この案を、楽曲のメインともなる部分に使わせて頂きました。












(と)季節往き

(か)駆けて

(な)何もかもが

(く)朽ちて

(て)手から

(し)知らず

(す)滑りゆく



決断…?嘆き…?諦め…?

そんなものを感じた、切ない部分。

曲の音と歌詞が本当に調和した部分で、美しいと思いました。

しかも頭文字を繋ぎ合わせると隠れた意味が浮かび上がります。

「咎無くて死す」

この隠れたワードをいかに自然に気づいてもらえるのか。

動画でどう表現するか、かなり大事な点です。


一時は、このシーンの前に暗転して

黒字に白い文字で「とかなくてしす」と表現させる方法を考えていましたが

初見の方にはかなり疑問を残してしまいそうだったので

そこまで違和感を覚えないような表現を心がけました。

「歌詞の頭文字」こそに注目してほしいということで

歌詞が消えたあとに頭文字だけ浮かぶような演出になりました。

その結果、一瞬だけ(見えにくいですが)「とかなくてしす」が

表現できたかなと思います。

これで気づく方がいらっしゃれば、本望です。







「桜 女郎花 風花も」

桜は春、女郎花(おみなえし)は秋、風花は冬の季語といったところでしょうか。

これをひとつひとつ再現するのもまとまりが難しいので

寒椿で表現したつもりです。

散らない花は無い。(風花は雪ですが)

物事は無常なのだと表現しているのかなと推測しています。




フォーカスが手前の寒椿から女性へ。

3Dだからこそできる表現です。

この構図は、初期にコンテを作った時から変わっていません。

”口ずさむ”は誰が見てもうたを詠んでいるのだと分かるように筆を持たせています。



曲の最後に近くなるとピアノの流れるような旋律が印象的です。

それに合わせるように切なさを表現できたらと思い、少し絵を動かしてみました。



天つ空へ。

女性と空が重なるのも制作初期と同じ構図です。

曲の深い演出でかなり味がでています。

なんだか伴奏に依存しているといっていいほどです。

鳥が端っこに羽ばたいている、という演出も考えたのですが

あえてシンプルに、音に集中してもらいたいですし

そちらの方が上手くまとまるかと思いましたのでそのままにしています。




晴れた冬の日…が表現できていたらと思いますが

青空のイメージではなかったので、色で合わせました。




オリジナル曲PVをいくつか担当させて頂いていますが、

曲の最後に、このようにシンプルに表示させるのは初めてかもしれません。

収まりもよいと自分では思っております。






最後に


このPVは美しい曲と一字一字に想いを秘めた歌詞ありきです。
 
1年ほど前に制作に携わらせて頂いた楽曲「way to the demise」と

同じコラボメンバーで制作を行ったのですが

やはりそれぞれが考察をし、話し合いをすることで

ひとつのものをつくるというのはとても新鮮でした。

「ネットでコラボをしながらひとつのものをつくる」というのは

実はとても難しいことで、信頼関係があってこそなのだと思います。


前回と同じメンバーでつくる、ということはそれを乗り越えていることを

意味しているのだと思います。

今回、瀬良さんから話を持ちかけられた時はとても嬉しかったです。

「いろはひめうた」は前回のPVをつくるきっかけとなる募集の際に

素敵な楽曲だと思っていた作品でありましたので、

まさかそれを担当させて頂けることになるとは、

ボカロの動画をつくっていて最も嬉しく思うことの一つです。

1度目には募集している曲を聴いて私から希望させて頂くのですが

2度目にボカロPさんから「今作もお願いします」と言って頂けるのは

動画師として絵師としてかなり嬉しいことなのです。



と、これ以上書くとPV制作のことからずれてしまいそうなので

ここで終了させて頂きます。



絵師としても動画師としてもまだまだ未熟ですが少しずつでも成長できたらと思います。